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恋の値段は二千円?
人生とは、妙なものだ。
あのヘンな男に金を騙し取られたかと思った矢先、その言葉通り理想の女の子出現。痴漢の疑いをかけられて、今、尻餅をついて、女の子に見下された格好のまま、暫し、時間が静止している。
――それにしても、可愛い! 理想通りの美少女だ。
「アンタ、健真でしょ?」
上からの目線で言われると、何か、SMっぽい感じがする。
「えっ?」
正直、状況は理解してるんだけど、脳がパニクッてるのは確かだ。
それに、周囲の視線が気になって仕方ない。
――えっ、俺の名前をどうして……、君、誰??? いや待てよ。こういう状況、以前にも、何度かあったような……。
「あーっ、玲奈。鈴木玲奈だ」
俺の記憶がいっぺんに爆発した。
「呼び捨てにするなーっ」
玲奈が怒鳴った。
昔のままだ……。
彼女とは小学生以来、七年ぶりだ。身体は成長しているが、顔立ちは、ほとんど変わっていない。
小学生の頃は、子分扱いで、いつも連れ回されていた。
実際、喧嘩とかも強くて、小学六年の卒業まじかでも、他校の男子ボスを負かせたくらいだった。
その玲奈が今ここにいる。
そして、俺を高い位置から見据えて、昔のように威圧してくる。
その目付きは、獲物を捕らえたヘビのように冷酷無比そのものだった。
そう、俺は大蛇に飲み込まれる弱小カエル、冷や汗が身体中を襲った……。
うそっ、だろうーーーーー!!!
気付けば俺は、玲奈にネクタイを引っ張れ、警察に連行される痴漢男のように見られてるんじゃないかと思ってしまった。
現に道行く人々達が、笑って通り過ぎる。
これって、結構情けない光景じゃないの?
俺の羞恥心がドワッと膨れ上がった。
ホントにもうイヤだよ。これが、二千円の恋愛成就って、わけっ?
そんな結末、望んでなんか、いないよおーーー。
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