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玲奈は入ってきた客を見ていた。
俺は、玲奈にわからないように、アッカンベーをした。
――くそーっ、何なんだ。コイツこそ、ちっとも進歩してないじゃないか!
そう心でボヤいている時、俺の耳に天女の声が響いた。
「北見くん。久しぶり」
顔を上げると、そこにはひとりの女子が立っていた。
うわっ、俺好みの完璧な理想のタイプ!
なんと、優美な。これこそ、天から羽衣をたなびかせ舞い降りた天女ではないか!
俺の心は、いっぺんに桜が満開になった。
「ああっ、浅井さん?」
中学時代ずっと同じクラスで、もちろん初恋の相手だった浅井美奈さん。
彼女のことは、憧れで、ずっと好きだった。
あの頃と変わらぬ長い髪、透き通った瞳、端正に整った顔立ちなのに、微笑む姿が太陽のようで、ホッコリしてくるのだ。
横にいる玲奈とは、大違い。
まさに天使と悪魔だな……。
確か今は、凜華女子大に通っていると聞いてはいたが、どうして、ここにいるんだ。
何故、突然の再会ということになるんだ?
――そっか、これはもしかして、二千円を払った結果もたらされた恋人出現という結末なのか。そうだ。そうに違いない。
やっぱり、あのオッサンは、恋愛の神様なんだ。
俺は、浅井美奈さんを眺めながら、顔がニヤけるのだった……。
「ゲッ、ぐるじい~」
玲奈のヤツが、またもネクタイを強く引っ張ったが、幸せ気分の方が遥かに勝っていたので、苦しくとも何ともなかったのだが、取り合えず叫んだ。
「玲奈、いい加減にしてくれよーーーっ!!」
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