23人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
二千円の恋愛は?
「何処で、知り合ったんだ、二人は?」
「だから、お前は、あたしの彼氏か」
玲奈が、またもつっ込みを入れてきた時、美奈の美声が耳に響いた。
「『凜華女子大付属高校』で三年間、同じクラスだったのよ」
えっ、三年間って、それじゃ俺と美奈の関係と同じじゃないか?
いや、関係っていうと、ちょっと、いやらしく聞こえてしまうけど、俺と玲奈が交代しただけってことか……。
つまり、玲奈は、『凜華女子大付属高校』に入ったってこと? 由緒正しき、お嬢様学校にコイツがか……信じられん。
「お前が、よく入れたもんだな。お嬢様学校なのに」
「なんだ、偉そうに。いつからそんな口を利けるようになったんだ」
玲奈の刺すような視線に気が引けた。
「いや、ちょっと、驚いただけだよ」
だめだ、また弱気になってしまった……。
「あたしは、中学から入ったからね。高校、大学と、そのまま上がっていったよ」
「えーっ、じゃあ、付属中学に行ったって噂は、ホントだったのか」
「そんな驚くことないだろ。相変わらず大げさなヤツだ」
「じゃあ、今、『凜華女子大』に通ってるんだ」
「まあね。美奈も一緒だよ」
「一緒ねえ。ホントに付き合ってるのかよ?」
「ほらまたあ、言い方が必至なんだよ。――ああ、なるほど、健真まさか、美奈に一目ぼれってことか?」
玲奈の心を見通す語気に身体が後ろにのけ反った。
「違うよ。浅井さんとは中学三年間、同じクラスで勉強した仲だったんだよ」
冷や汗も出てきた。
「なんだ、結局、惚れてたんだな」
「な、な、何、言いだすんだよ」
俺の顔面は、真っ赤になっているんだろう。熱が最大上昇している――。
「玲奈、そんなにいじめちゃ可哀想よ」
さすが、美奈だ。俺の愛しき人よ。
「あっ、はははは、わるーい。美奈から聞いてたんだよ。健真が、ずっと三年間、ラブラブ光線送ってたってこと」
「げっ」
俺は熱で顔面が破裂しそうになった。
もう、何も考えられない。ここから何処かへ飛んでいきたい気分だ――。
「しかし、電車で見かけた時は、驚いたよ。健真が背広着て、突っ立っているんだもん。あのチビがだぜ」
玲奈は、またも大笑いをした。
――そうだった。電車で見かけた女の子……なんで、気づかなかったんだろう?
あの時は、けっこう可愛く見えたんだけど、今、ここにいる玲奈は、何でこうも違うんだろ……。
待てよ。俺、何でここにいるんだよ。
玲奈に無理やり連れて来られて……浅井美奈にも再会した。
でも、二人が……そういう仲だなんて、ショックだよな、やっぱり……。
俺の二千円の恋愛は、どーなったの?
いや、今はそれより、現実に戻らねばならない。
「さっきも言ったけど、何か用でもあるのか? 俺、ホントに会社に戻らなきゃいけないんだよ」
そう、それが責務。社会人としての務めがあるんだ。
「懐かしかったから、つい、嬉しくて――じゃ、ダメかな」
急に、可愛い声を出した玲奈だった。
「ええーっ」
俺やっぱり、揶揄われているんだ。
しかし、美奈の言葉に救われた。
「実はね。北見君に、私の彼氏になってほしいの」
最初のコメントを投稿しよう!