二千円の恋愛は?

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二千円の恋愛は?

「何処で、知り合ったんだ、二人は?」 「だから、お前は、あたしの彼氏か」  玲奈が、またもつっ込みを入れてきた時、美奈の美声が耳に響いた。 「『凜華女子大付属高校』で三年間、同じクラスだったのよ」  えっ、三年間って、それじゃ俺と美奈の関係と同じじゃないか?  いや、関係っていうと、ちょっと、いやらしく聞こえてしまうけど、俺と玲奈が交代しただけってことか……。  つまり、玲奈は、『凜華女子大付属高校』に入ったってこと? 由緒正しき、お嬢様学校にコイツがか……信じられん。 「お前が、よく入れたもんだな。お嬢様学校なのに」 「なんだ、偉そうに。いつからそんな口を利けるようになったんだ」  玲奈の刺すような視線に気が引けた。 「いや、ちょっと、驚いただけだよ」  だめだ、また弱気になってしまった……。 「あたしは、中学から入ったからね。高校、大学と、そのまま上がっていったよ」 「えーっ、じゃあ、付属中学に行ったって噂は、ホントだったのか」 「そんな驚くことないだろ。相変わらず大げさなヤツだ」 「じゃあ、今、『凜華女子大』に通ってるんだ」 「まあね。美奈も一緒だよ」 「一緒ねえ。ホントに付き合ってるのかよ?」 「ほらまたあ、言い方が必至なんだよ。――ああ、なるほど、健真(けんま)まさか、美奈に一目ぼれってことか?」  玲奈の心を見通す語気に身体が後ろにのけ反った。 「違うよ。浅井さんとは中学三年間、同じクラスで勉強した仲だったんだよ」  冷や汗も出てきた。 「なんだ、結局、惚れてたんだな」 「な、な、何、言いだすんだよ」  俺の顔面は、真っ赤になっているんだろう。熱が最大上昇している――。 「玲奈、そんなにいじめちゃ可哀想よ」  さすが、美奈だ。俺の愛しき人よ。 「あっ、はははは、わるーい。美奈から聞いてたんだよ。健真が、ずっと三年間、ラブラブ光線送ってたってこと」 「げっ」  俺は熱で顔面が破裂しそうになった。  もう、何も考えられない。ここから何処かへ飛んでいきたい気分だ――。 「しかし、電車で見かけた時は、驚いたよ。健真が背広着て、突っ立っているんだもん。あのチビがだぜ」  玲奈は、またも大笑いをした。  ――そうだった。電車で見かけた女の子……なんで、気づかなかったんだろう?  あの時は、けっこう可愛く見えたんだけど、今、ここにいる玲奈は、何でこうも違うんだろ……。  待てよ。俺、何でここにいるんだよ。  玲奈に無理やり連れて来られて……浅井美奈にも再会した。  でも、二人が……そういう仲だなんて、ショックだよな、やっぱり……。  俺の二千円の恋愛は、どーなったの?  いや、今はそれより、現実に戻らねばならない。 「さっきも言ったけど、何か用でもあるのか? 俺、ホントに会社に戻らなきゃいけないんだよ」  そう、それが責務。社会人としての務めがあるんだ。 「懐かしかったから、つい、嬉しくて――じゃ、ダメかな」  急に、可愛い声を出した玲奈だった。 「ええーっ」  俺やっぱり、揶揄(からか)われているんだ。  しかし、美奈の言葉に救われた。 「実はね。北見君に、私の彼氏になってほしいの」
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