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百合ってことですか?
浅井美奈が向かいに腰かけた。
玲奈は俺の横で、コーヒーに砂糖を入れて、スプーンを回している。
「ダチだよ」
玲奈が美奈の顔をみながら微笑んだようだった。
「はあ……?」
俺は不思議な言葉聞いたような気がした。
店内に静かな音楽が流れてきた。
魔女ママの麻里子さんが気を利かせて、ムードある曲を……なわけないな。取り敢えず、俺達を客として迎えているんだろう。
ってことは、客がいないときは電気代を節約して、休業状態にしてるってわけ?
いかにも、魔女ママらしいけど、別にそんなに驚くことではないし、どうでもいいことだよなあ……。
「ダチって、友達ってこと?」
横で、チーズケーキをがっついている玲奈を見た。
「当たり前のこと訊くな、バーカッ」
相変わらず口の悪いヤツだ。
「いつからなんだ?」
「おまえは、あたしの彼氏のつもりか?」
玲奈が、つっ込んできた。
「別に、お前と付き合っているわけないじゃないか」
「健真が、あたしと美奈がラブラブみたいな言い方するからだよ」
「してねぇよ。そんなの」
――まさか、そんなつもりで訊いたわけじゃなかったけど……。
「まあ、いいわ――正直に言うわ。美奈は、あたしの彼女だよ」
えーーーっ、それってやっぱり、百合ってことですか?
向かいの美奈を見た。
何も言わず、にこやかに微笑んでいるだけだ。
俺は、脳天をハンマーで殴られたかのように、記憶が全部飛ばされたようになった。
いや、むしろ、そのほうが幸せだったに違いない。
もはや、これは現実なのか……?
冷静になれ、冷静になるんだ、俺。
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