一章 墓守りの青年

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 パンを買い終えたリフィーアは、墓に供える花を墓地の近くの花屋で買った。  叔父の屋敷であったことなど忘れたような満面の笑みで、リフィーアは墓地へと続く門をくぐった。 「いつも思うけど、どうして、この都だけ墓地が中央にあるのかな……」  リフィーアは木々の間にある舗装された道を歩きながら、呟いた。  木々が覆い茂る森の中にある墓地は、どういうわけなのか都の中央に位置している。  叔父の家族に連れられ、何度か隣の街や都に行ったことがあるが、どの街もどの都も、墓地は外れに位置していた。  リフィーアが生まれ育った都――カエティスの都だけ、墓地が中央にある。  都の名前にも、物語にもなっている何百年も前にいた騎士のカエティスが眠る墓があるから中央にあるだとか、当時の長が中央に置くことを決めたなど様々な憶測が長い間、飛び交っているが未だはっきりとした理由は分かっていない。  リフィーアも両親の墓があるのもあって気になって本を読んだり、近所の年配の人達に聞くのだが、やはり分からなかった。 「うー……いくら考えてもやっぱり分からないや。知っている人だとか、古い文献だとかないのかなぁ」  小さく息を吐いて、リフィーアは緩く首を振った。  色々と考えている間に、リフィーアは両親の墓がある広場に辿り着いた。  久しぶりに両親に会うのだ。  笑顔でいないと、両親が心配してしまう。  気分を切り替えて、広場の奥にあるリフィーアの両親の墓へと歩く。  両親の墓へと向かう最中、何羽ものカラスの鳴き声が響いた。それもどういうわけか、勝ち誇ったような鳴き声だ。 「えっ、どうして、何羽もカラスが鳴いてるの?!」  普段はカラスがいても大体一羽や二羽くらいなのに、今日は十羽以上がいて、鳴いている。  不思議に思い、リフィーアはカラスが鳴いて飛び交っている辺りを見た。  リフィーアが立っている位置が暗がりでよく見えないが、何か黒い影が地に伏している。人が倒れているようにも見えた。
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