一章 墓守りの青年

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「……もしかして、人?! 人が倒れてる!? しかも、お父さん達のお墓の前で?!」  驚いてリフィーアは声を上げた。  まさか、両親の墓の前で人が倒れているとは。何とタイミングの悪いことか……。  リフィーアは自分のタイミングの悪さを少しだけ呪った。  だが、この時のリフィーアは知る由もなかった。この遭遇が、彼女を巻き込むとんでもない事件への一歩だということを……。  しばらくの間、呆然と立ち尽くしたまま、リフィーアは黒い影を見つめた。 「し、死体じゃないよね……? カラスがたくさんいるけど……」  そう呟き、リフィーアは考え込む。  両親の墓の前にいる黒い影がもし人間で、死体だったらどうすればいいのだろうか。  もちろん、丁重に埋葬するべきなのは分かっているが、それを一人でやっていいものなのか。  もしかしたら、事件に巻き込まれて逃げ延びたのはいいものの、途中で力尽きてしまったのならば、都を守る自警団の人達を呼ばなければいけない。  呼ばなければいけない……のだが。 「そうなると、叔父様やお兄様も心配してすぐここにいらっしゃるよねー……」  嘆息して、リフィーアは目線を足元に落した。  叔父達が心配して来てくれるのは嬉しいが、先程逃げてきたこともあって顔を合わせにくい。  出来ればここは死体ではないと願いたい。 「死体じゃないことを願いつつ、確かめないと何も分からないよね」  目線を両親の墓の前にいる黒い影に戻し、リフィーアは手を少しだけ強く握った。 「よしっ。確かめよう! 怖いけど」  大きく頷き、リフィーアは恐る恐る両親の墓へと近付いた。  暗がりから一歩ずつ前へ歩く。  両親の墓へと一歩ずつ近付いていく度に、太陽の光が強く墓地に射し込む。  暗がりの道を通ってきたためか、少しだけ弱っていた花が太陽の光で元気を取り戻したようにリフィーアは思えた。  出来れば、あの黒い影もそうなってくれたら尚良いのだが。  恐怖も相まって、普段の歩幅より狭い歩き方でリフィーアはゆっくりと近付く。
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