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プロローグ
その場所を知る者は誰一人としていなかった。
紅く染まる陽が姿を消せばひとたび桜が咲き乱れ、陽が姿を現す朝方には全てが枯れ落ちる。そしてまた陽が姿を消せば桜が咲く。
深い深い森の一角にあるとされている、未だかつて誰も足を踏み入れたことが無い理想郷。
いつの頃からか人々の間にその理想郷の伝説が生まれた。誰も知らないはずなのに誰もが知っているその楽園。皆が皆ソレは伝説の、空想の中の世界に過ぎないと思っていた。
だが
その一晩だけの短命な、美しい桜が咲き乱れる月夜に照らされた楽園に足を踏み入れた者が現れた。
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