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桜幻町
「あの、すいません、今日は何の神の日ですか?」
直智は本堂から出て来た男性に訊ねる。
「ん? 今日は桜祭り2日目だから遠い思い出の神の日だよ」
突然声を掛けられた事に軽く驚いている様子の男性だったが親切に答えてくれた。
…やはり、きちんと「あの日」に戻って来ているらしいな。さて…と、久しぶりの我が家へ帰るか。
実際の所、時間は数分も立っていないのだが直智にしてみれば約1年ぶりの実家。親や親戚、そしてチビ達にも1年近く会ってはいない。流石に恋しくなっている事だろう。
直智は歩く。桜幻寺、屋台、行き交う人々。自分の周りをしっかりと観察しながら歩く。
前までと違って見える。なんだか…すごく楽しい気分だ。
直智は桜祭りが大好きだった小さい頃の心を取り戻したかの様に1人で静かにはしゃいでいた。
すると
「お~い、直智~!」
自分を呼ぶ声が聞こえたのでその方向に視線を向ける。その視線の先、数メートルの場所に直智を花火に誘ったクラスメートの3人組が立っていて直智に向かい手を振っていた。
「よぅオマエ等、花火は終わったのか?」
直智も手を振り返しながら小走りで駆け寄り声を掛けた。
「あぁ、ついさっき終わったよ。そろそろ家に帰ろうかと思ってたんだ」
「そうか、俺も家に帰る所だったから途中まで一緒に良いか?」
「あ、あぁ、別に構わないよ。それにしても珍しいな、直智が俺達と一緒に行動するなんて」
「ハハハ…それより夏休みの宿題で…」
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