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「何で、そう思ったんだ?」
「だって、モリナガが申し訳なさそうに君を見てたから」
彼女は少し悲しそうな顔をしている。責められているような気分になった。
気まずい空気が流れる。
「――漢字ってわかるか?」
「カンジ?」
俺は取り繕うように話題を変える。魔法使いもそれに乗って「うん、わからない」と笑顔を作る。
「漢字っていうのはな――兎に角、覚えておくと便利だ」
あまりに説明が下手で恥ずかしくなる。彼女も「へ、へぇ」と相槌を打つが、納得していない。
「元々は中国の文字でさ」
俺は頭を必死に使って何か言葉を探す。
「チュウゴク?」
――そういえば、外国の話はしてなかった。
「え、えっと、中国は外国で、このせか――地球には国がいっぱいあるんだ」
話しながら外国って言葉が通じるのか不安になったが、彼女は「そっか」と笑う。
「じゃあ、ここは?」
「日本」
「そっか。地球には外国があるんだ。次はチュウゴクに行こうかな」
「――次?」
思わず、俺は聞き返す。
すると、彼女は一瞬だけきょとんとして「言ってなかった?」と小さく笑った。
「旅に憧れてて」
「旅……」
そんな話、全然聞いていない。
「そうだ! モトキに絶対、お手紙書くね」
俺を置いてきぼりにして、彼女は話を続ける。
彼女がいなくなることなんて思い浮かびもしなかった。
「――モトキ?」
彼女は不思議そうに俺を呼ぶ。
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