兄の話

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 人にはない力を持っていると、色々とズレを感じてしまい、結局のところ独りだと思い知らされる。私には生まれつき、闇を操るという不思議な力を持っていた。普段は何もないが、感情的になると勝手に暴れだす力に私はどうすればいいのか分からず、そのたびに同じ力を持つ祖父が暴れる闇を制御するということを繰り返していた。 「どうして、こんな力があるの?この力のせいで、またひどいことをしてしまった!」  道で捨てられていた子犬に手を差し伸べた時、子犬に吠えられたことで驚いてしまい、それだけで闇が勝手に出てきて、子犬を飲み込んでしまった。慌てて闇から子犬を出したものの、すでに息をしていなかった。  泣きながら家に帰り、嗚咽をもらしながら祖父に訊いた。 「私達のご先祖は神様から生まれたんだ。そしてその血をずっと守ってきたから、今でもこうやって力が使えるんだ。今はまだ、うまく扱えないかもしれないが、もう少しすれば制御できるようになる。私達は他の人とは違う。けれど、だからと言って力を見せつけてはいけない。この力は、大切な人を守るために使いなさい」  祖父の言いつけ通り、闇を出さないように意識していたものの、そうすることで感情を表に出すことがなくなっていき、私は闇を扱うことは、心を無くしていくことなのだと思い知った。
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