兄の話

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「それとね、レイジは覚えていないかもしれないけれど、アラヤはお父さんとそっくりなのよ」 「父さん?」  私の父は3歳の時から行方不明だと聞かされていた。 「そう、アラヤの外見はお父さんとそっくり。覚えてる?」  私は首を振った。父がどういった人だったのかは知らないが、アラヤの姿を見た限りでは、きっといい人だったのだろう。 「アラヤ・・・綺麗だね」 「ええ、そうね。レイジ、実はねこれは他の人には内緒なのだけれど、アラヤはね、あなたの弟でもあるのよ」 「弟、アラヤは僕の弟?」 「うん。レイジを生んだ後に、アラヤはここで生まれたからね。神様ではあるけれど、体は人間と変わらないもの」  私はじっとアラヤを見た。 「ねえ母さん、アラヤはいつ目を覚ますの?」  私は母に訊いた。母は残念そうな表情をする。 「それはまだ分からないの。でももし、アラヤが目を覚ましたら、レイジは仲良くしてくれる?」  その時私が何と答えたのかは覚えていない。けれどたぶん、とても嬉しそうに答えたのだと思う。私はその時から、神様でもある弟が目を覚ますことを願っていたのだから。
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