引っ越しマニア

　友達がまた引っ越すという。
　今年に入ってからもう三度目。最初の独り暮らしからだと数えきれない。
　持ち物は少ないから業者に頼む程ではないが、それでも人では欲しいらしく、今度酒を奢ってもらう約束で手伝いに行った。
　最初の数回は、どうしてこんなにたびたび引っ越しをするのか尋いたけれど、飽き症で一つ所に長く留まれないと言われて以来、そういうもんかと理由は追及しなくなった。でも前回引っ越しを手伝った時、友達には言ってないがちょっとしたモノを見てしまい、引っ越し理由に俺なりに見当をつけた。
　その見当が、今回手伝いに来て確信に変わった。
　荷を運んでいる最中、窓ガラスなどに時折映り込んだ人影。あえて見えていないフリをし、知らぬ顔をしていたが、確かに『それ』は部屋にいた。そして、軽トラでアパートを離れて行く俺達をいつまでも部屋から見つめていた。
　前も同じことがあった。間違いなく友達は霊に憑りつかれている。そしてれそれから逃げるために引っ越しを繰り返しているのだ。
　でもいまだに頻繁に引っ越すあたり、降り切ったつもりでも例はずっと友達について来ているらしい。
　前回の引っ越しでなんとなく判ったそのことを友達に話したら、思い切り顔色を変えた後、友達は俺の予想以上の事実を離してくれた。