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さあ、元の時代に戻ったのだ。
あれ? 地球がある。お母様も生きてる。どうなってるのだ。地球だと思ってたけど間違って別の惑星を破壊したのだろうか。まあ、天才っていうのは細かい間違いを犯してしまうものなのだ。僕がどれくらい天才かっていうと……(以下六千二百十五行省略)
あっ、あの変な男は何者だ。ボロボロの白衣を着て、牛乳瓶の底みたいなメガネをかけて、ニタニタ笑ってるのだ。気持ち悪い男なのだ。でも、どこかで見たことがあるのだ。
たしか僕が鏡の前に立つと鏡に映る男によく似てるのだ。論理学的に考えると、あいつは僕に似てるのだ。あっ、あいつ、僕の分子破壊銃を持っているのだ。……ということは、非ユークリッド幾何学的に考えると、あいつの正体は……僕の分子破壊銃を盗んだ泥棒だな。
あっ、あいつ、僕のお母様に銃口を向けてる。あっ、お母様が破壊されたのだ。あっ、あいつ僕のタイムマシンの中に入って……。
あれっ? でも、タイムマシンも分子破壊銃もここにあるのだ。
そうか、僕は頭の回転が速いからわかったのだ。あいつは僕なのだ。頭の悪い君たちに説明しよう。つまり、僕は最初のタイムトラベルで十分前の世界に行ったつもりだったのが、実は十分後の世界に行ってしまったのだ。つまり、移動時間設定のプラスとマイナスを間違ったのだ。それが、さっきの変な男……カッコイイ男の正体なのだ。
まあ、天才ってのはプラスとマイナスなんていう細かいことは間違ったりしてしまうものなのだ。僕がどれくらい天才かって言うと……。あっ、なにか大きな間違いを犯してしまったような気がするのだ。だけど、それが何なのかわからないのだ。なんだか、はやく思い出さなければいけないような気がするのだ。
あっ、上空にタイムマシンが現れたのだ。何か変な物を投下したのだ。アルキメデスの原理を応用した推理に基づいて考えると、あれは分子破壊爆弾なのだ。
……というわけで、僕だけタイムマシンで過去に逃げるのだ。僕が破壊されたら大きな損失だからね。
人類の未来にとって。
《終わり》
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