光と闇の方程式

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 2  秋良が緊急入院して2日。  あらゆる検査を受け外傷を調べた結果、臀部の創傷および細胞こう門に裂傷が見られ洗浄後に裂肛薬で治療を試みるもの、依然として秋良は意識を取り戻しません。  外科医および心療内科医の見解から、秋良は重度の心的苦痛と恐怖を味わい心を閉ざしてしまった模様、主たる治療は家族の献身的な愛情を注ぐこと──でした。  そこで母親がつきそい病室に泊まり込み、仕事が終われば父親が見舞いに現れ、梓沙も学園から直に秋良の病室に訪れるという日々が始まりました。  入院するのは春日部総合病院。完全看護ではありますが、個室の患者であれば家族の泊まり込みは自由。個室外の廊下や病室内は花かごで溢れ、それだけで秋良は素敵な友人に恵まれているとうかがえます。  秋良の将来に関わる不名誉のこと。公には帰宅時に事故に巻き込まれて入院、訪れる見舞客にはそう伝えているのでした。当然ながら学園サイドには事実を話してあります。  今後このような犯罪が繰り返されることのないよう、学園側でも対策をしてもらえるよう訴えたのです。緊急会議として学園都市は一日の休校、門は閉じられました。  翡翠ヶ丘の創立者である月森グループの理事長を筆頭に、教師と保護者との連携で閉門までの見まわりを強化するという決定が下されました。  ただ学園都市の全校が休校となり、しかも会議に理事長まで現れるとあっては相当な事件だったのではと噂も広まり、それが秋良の事故後に起きたことも重なり病室に訪れる生徒は多数。  ある者は野次馬心を携えネタを仕入れようとやってきます。けれども大多数は秋良を案じて見舞いに訪れ、昏々と愛らしく眠る秋良の頬に触れエールを送り去ってゆくのでした。
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