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下手な男子よりはるかに強い梓沙は泣き崩れ、反対にか弱さを集結させたような母親は表情を引き締めます。母は強しと言いますが、息子が得るべき未来の幸せに向け母親は腹をくくったのです。
その日の晩。父親が病室に顔をだすと家族会議がおこなわれました。
辛い出来事など記憶から失われてしまえばいいのですが、そんな都合のいい結果が待っていてくれるとも思えません。医師にも最悪のパターンを覚悟するよう言われています。
これから起こるであろう辛い現実と対峙するため、父親と母親それに梓沙は秋良を囲み何があっても泣かず愛をもって接しようと決意するのでした。
秋良が目を覚ましてから一か月、少しずつ変化が見られるようになりました。
相変わらず意思の疎通は叶いませんが、秋良の好きなオレンジを口許に運んでやると可愛いく口を開いてついばみます。
食べる様子は”もっもっ”という表現がふさわしく、身震いするほどに可愛くて仕方のないブラコンの姉は秋良を抱きしめ頬ずりを。
そしてまたおちょぼ口にオレンジを近づけ餌づけをするのでした。
月日は流れて入院から二か月目。木の葉も色づく秋が訪れます。もうすぐ秋良の誕生日、母親と梓沙によって病室は楽しそうに飾りつけされました。
授業が終われば見舞いにやってくる級友たちも秋良を祝いたい一心でお手伝いをし、まるでおとぎの国のようなお菓子の家のような病室となりした。
色とりどりのバルーンやリボン飾り、級友たちが授業の合い間に力を合わせてつくった折り紙や紙ひこーきも天井からつられ、秋良の大好きなBL戦隊イケメンジャーのフィギュアも飾られています。
その日に配られたプリントや授業内容のコピーなど、毎日のように秋良の許へ届く友愛も病室には溢れているのでした。
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