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いつものように家族で過ごし、明日の仕事や学校に備え父親と梓沙は帰宅しました。秋良が淋しくないよう母親は病室に泊まり込み、各々ベッドで夢の世界に旅立ちましたが……。
午前三時頃でしょうか、静寂の病室に金切り声が響きます。母親は飛び起きると照明を点け秋良の許に。家族が最も怖れていたことが秋良を襲っていたのです。
医師に言われた症状、フラッシュバックが秋良を苦しめるのでした。
母親は急ぎナースコールをすると、悲鳴をあげつづける秋良を抱きしめます。なにかを追い払うように腕を振りまわしたり、手で顔を覆い隠したりと秋良はひどい錯乱状態。
まえもって医師に指導されていたとおり、暴れる秋良が怪我をしないよう抱きしめて保護。まだ幼い秋良でしたからできたこと、これが思春期の男子であれば母親では保護できなかったでしょう。
程なくして医師と看護師が病室にやってくると、鎮静剤を打たれてようやく秋良はおとなしくなりました。
それまで気丈に振る舞っていた母親でしたが、医師たちが現れ秋良が寝息を立てると身体から力が抜け、同時に涙が止まらなくなってしまいました。
看護師の気遣いにより母親もベッドに誘導されましたが、夫より「何かあればいつでもかまわん、すぐに連絡をしてくれ」と言われていたことを思い出し、夜中でしたがコールをしました。
すると二回の呼び出し音とともに夫はコールを受けます。
眠ってはいましたがいつも気は張りつめていて、察するに秋良が入院してからというもの一度と深い眠りにつけなかったのでしょう。
梓沙に置手紙を残すと、夫は妻の許へ父親として秋良の許へ向かうのでした。
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