ぼくへと紡ぐDiary

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 梓沙姉さんから手ほどきを受けた護身術は主に合気道で、他を傷つけるコトなく身を守るというもの。けれどいざとなれば相手の虚を衝くために武器も必要だというコトで、空手と合気道をミックスさせたような技も伝授してくれた。  それなりに稽古は辛かったけど、ひとつまたひとつ技を覚えるたびに自分がつよくなっていく気がして嬉しかったのと、何より稽古中は断わりなしに姉さんの身体に蹴りを入れられるのが堪らなく嬉しかった。  いつも稽古の延長だ、とっさの判断を養え、やれ瞬発力を身につけろと、ことある毎にぼくを虐め抜いてくれた姉さんだ。合法的に姉を痛めつけられるなんて幸甚の至りじゃないか。  ボルテージも上がりまくり、気合が入るのも当然だった。……とはいえ正直に告白すると零勝十敗、一度として姉に拳も蹴りも決まらなかった。  炸裂するどころかひらりと躱され、逆に返り討ちに遭ったのが黒歴史。  やはり少しくらいは逞しい男にならなきゃと志を改め、おもちゃ屋で出逢った”BL戦隊イケメンジャー”に惚れ込み入隊を果たし、それは大学部に進んだ現在でも持続中と報告しておく。  ぼくにとっての過去。  悔やんでも仕方がないコトなど百も承知、くよくよ考えてもどうしようもないと理解している。けれどひとつだけ後悔するならば、姉を巻き込み怪我をさせる結果となったのが無念。  今ならば自分の顔や身体つきが男を惹きよせると自覚はあるので、できるだけ人通りの少ない場所は避け気をつけるようにしている。  だけど当時は七歳だ、そんな自覚も危険回避すら思いつかない。後の祭り、後悔先に立たずといったことわざがぴったりな、ぼくの辱めに遭った事件を心に書き記す。  確かあの日は友達と遊ぶ約束をしていて──────
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