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そこで事件は起こります。
左右を木々や茂みに覆われた遊歩道を進んでいくと、突如としてひとりの男が秋良のまえに飛び出してきました。
当然ながら驚いた秋良は立ちすくみ、逃げるまもなく拘束されてしまいます。両脇を抱えあげられると肩に担がれ、茂みのなかへと連れていかれたのです。
恐怖のあまりに声が出せず、それを好機とばかりに男は秋良の着衣を乱暴にはぎ取っていきます。布地が引き裂かれる音に身がこわばり、秋良は声さえ凍りついてしまいました。
男は百八十前後の大柄な体躯をしており、シャツのうえからでも分かるほどに筋肉質。子供の秋良など片手ひとつで身動きを封じてしまいます。
黒いキャップを深く被りサングラスで相好を隠してはいるもの、肌のハリや秋良を大人しくさせるために脅しかける声の様子から、どうやら二十代前半から後半であると感じられます。
どうしてぼくがこんな目に遭わなければならないのか。
男の目的が分からない秋良は恐怖を極め、とめどなく溢れる涙は絶望の色をしています。けれど男にとって秋良が恐怖に震え涙する表情さえ興奮材料であり、欲望をかき立てるエッセンスだったのです。
獣のような息づかいに怖気だち、もはや秋良の精神は崩壊寸前です。このままぼくは殺されてしまうのか、嫌だ誰か助けて怖いよと心が血を流し訴えます
ぎゅっと目をつむり男の顔を見ないようにしていれば、ふいに頬を生温かいものが這う感触に秋良は「ひっ」と小さく悲鳴をあげてしまいました。
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