光と闇の方程式

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 どうやら頬をつたう涙を舐めとろうと男が舌を這わせていたようです。すぐに舌が離れると「黙れっ」と低い声で怒鳴られ、いよいよ秋良は恐怖に全身が痙攣を起こします。  そして男の手がハーフパンツの前立てにかかり、一気に足から抜かれてしまいました。今や一糸まとわぬすがたにされた秋良は、男の慰み者として堕ちる運命でしかありません。  蒼白となった表情、色を失った虚ろな眼。四肢は弛緩し、ぐったりとしています。首から力が抜けると頭部は横に向き、まるで魂の抜けた人形のようでした。  あまりの恐怖に秋良は心を閉ざしてしまい、ただ息をするだけのマリオネットになったのです。けれど男からすれば、それは願ってもみないこと。  拒絶を試みたり耳障りに喚かれることもなく、生きた人形を凌辱できるとあっては一石二鳥。柔らかい少年の肉を味わい、秋良が放つ甘い香りを堪能しながら熱をいただく。  まさに完璧な獲物を手に入れたと、男は口角をあげ薄笑いをするのでした。  秋良の肌を這う男の手。第二次性徴期を迎えるまえのしなやかな身体、無駄な筋肉のない丸みを帯びた柔い肌は手に吸いつき、異常なまでに男は興奮を覚えます。  そして至福のような時を過ごし欲望を満たした男は、最後に腰ベルトに忍ばせていたナイフをひき抜くと刃を秋良の左薬指にあてがったのです。
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