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グラウンド、体育館、あちこち見て回った。大体は現実のものと一緒だ。まあ俺の記憶で形成されているであろう学校だから、俺の知っている景色なのは当然だ。 ただ、中庭に来たときに予期せぬ出来事が起きた。ベンチに1人の女子高生が座っているのである。 特に学校の怪談など怖いことを意識していたわけではなかったので、想定外の事態であった。ただ、先ほどの化け物と違って怖い雰囲気はなく、むしろかわいらしかった。しかも、しかもだ、顔が沙耶香に似ている。まあ似ているだけで、沙耶香ではないのだが。 そんなことを考えていたら、少女と目が合った。どうしたらいいか分からなかったが、俺はとりあえず、「こ、こ、こんにちは」と挨拶した。 すると少女はにこっと笑って、「うふふ、今は夜ですよ。こんばんは」とほほ笑んできた。そして、「隣、いらっしゃい」と言ってきた。 まさか隣に言った瞬間食われるとかいう怖いやつじゃないだろうなと思ったが、自分の夢なので最悪自分の都合よく夢の内容を変えればいいと思い、俺は少女の隣に行った。 「君はここで何してるの?」 「星を見ているの。夜空、見上げてごらん」 言われるがままに見上げると、確かにきれいな星空が広がっていた。現実の都会じゃ絶対に見られないような。 そしてふと、横目に彼女を見た。ぱっちり二重に高い鼻とすらっと肩まで伸びた黒髪が印象的で、すごく綺麗な子だ。誰なんだろう。沙耶香に似ているが、沙耶香ではない。夢に出てくる人物なのだから、きっと現実で見たことがあるのかもしれないが、、、。いや、やはり見たことなんてない。絶対に今が初対面だ。 「ところで君は、いったい誰なの?」 「私は私よ」 ドラマや歌の歌詞にでも出てきそうな返しをされてしまったが、俺はそんな名言を聞きたかったわけじゃない。 「えと、名前は?」 「そんなのどうだっていいじゃない。あなたこそ誰なの?」 結局名前を教えてくれない。それどころか、俺の名前を聞かれた。 「俺は中条拓海です。拓海って呼んでくれたらいいかな」 「じゃあ、拓海」 そういえば沙耶香以外に「拓海」と呼ばれたのは久しぶりなので 、少しドキッとした。
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