ある農夫の話

2/2
前へ
/2ページ
次へ
神様は不公平だ。 そんな言葉は聞き飽きた。 神様はどこにもいない。 それも聞き飽きた。 本当にいないから、探しもしないのか? 探しもしないから、いないのか? えっこらせ ほいこらせ 鍬で畑を耕す男がいた。 「おいそこの人、ちょいと手伝っておくんな」 呼び止めた男は見すぼらしく、必死でその日の糧を得ようとする、貧しい農夫だった。 「ひとつ考えちゃくれないか?」 「なんだい学者か?オイラに学はないぜ」 「学に縛られない奴に訊きたいのさ。 お前さんにとっての神様ってなんだい?」 「そんなもん決まってる。 種をまけば芽吹き、花を咲かせて葉っぱが増え、秋には実りをつける事さ」 「そんなものを神様と言うのかい?」 「そんな当たり前があることが神様なのさ」 男は稲藁を撒いて、手を叩いた。 また来年も実るようにと。 「神様へ」完結
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加