魔法

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仁美の手をやんわりと離し、秀馬は笑顔を向けた。 「申し訳ありません。毎日、仕事ばかりにかまけていまして。近日オープンする店もあるので、全てにおいて時間が足りないくらいです」 秀馬の長くて細い指が仁美の髪に触れる。鏡の中の仁美を見ながら、秀馬は耳元で囁いた。 「必ず時間を作って、今度お食事にお誘いします」 ーーー今度とお化けは、出た試しが無いって言葉知らないのか? 俺が本気で誘いたい時は具体的な日にちを決めてから言う。今度なんて、あてのない言葉は使わない。 「ホント!」 嬉しそうに両手を合わせる仁美。 軽く頷いて、秀馬は仁美から離れ鏡の中に映る仁美をじっと優しく見つめる。 「今日もお綺麗ですよ。貴方の髪は、いつも大変艶やかだ」 ーーーこれは、事実だ。さすが一流芸能人。長峰仁美は、なんだかんだ言っても、やはり選ばれた人間なのだ。髪の質、肌質、どれをとっても稀に見る艶やかさだ。 「やった! 嬉しい!」 仁美の嬉しげな声に秀馬は、微笑みを返す。 ーーーどのお客様にも必ず綺麗になって満足して帰ってもらいたい。これは本音。 受け持ったお客様を必ず満足して帰らせたい。そんな風に日頃から思って接客している。 ふと、待合室を見ると、まだざんぎり頭が下を向いて座っていた。 「杉並さん、次、僕の予約時間まで何分あるかな?」 受付にいき、スタッフに予約時間を確認する秀馬。
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