魔法

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「40分後です」 「では、あのざんぎり……いや、モスグリーンのセーターを着ているお客様をお呼びして」 「あ、あのお客様は初回クーポンの方で……」 慌てる受付スタッフ。 「わかってる。……見た通り、手が空いてるのは現在俺だけだ。お客様は誰であれお待たせしたくない。それなら、俺が受け持つ」 「はい、でも……お値段は?」 「もちろん、初回クーポンを使うのだから税抜き1000円だ」 「わかりました。ご案内します」 そそくさと、ざんぎり頭な女のところへ行くスタッフ。 ーーーあんなざんぎり頭は、普通の奴では対処できないだろう。揃えるのだけでもひと苦労に違いない。 腰に巻いたシザーケースからマイハサミを取り出し刃先を指先と目視で確認する。 「こちらへどうぞ」 ざんぎりを秀馬の待つ案内してきたスタッフ。革製で出来たスタイリングチェアをざんぎりが座りやすいように回転させる。 ーーーよし、気合い入れてやる! カリスマの腕の見せ所だ! たぶん、待っている間にひと眠りしていたのかフラフラして目をこすりながら歩いてくるざんぎりの女。 そんな女の揺れる髪を見ながら、秀馬は首を左右に倒して関節を鳴らした。
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