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ブローチ
★ぶろーち
久しぶりに仕事を早く上がれた秀馬は、店の近くにあるファッションビルをブラブラと見て回った。
車には、なるべく乗らないようにしていた。
何故なら、トレンドを取り入れたオシャレな人達には実際に街に出てみないと出会えない。街で出会える素敵な人の髪型をチェックするのだ。
それで、実際に生活する動いた時にも素敵に見える髪型を見て、いい点をメモしたりもする。
ファッションビルとビルの間、細い路地の奥に小さな光が見えていた。
ーーーあれ、あんな所に店があるな。いつから出来てたんだ? なんかの店だろうか。
路地に入り奥に進む。行き止まりに小さな店があった。
ウィンドーを覗くと、アンティークな品物が所狭しと飾ってあった。
写真立てや、蝋燭立て、置き時計にオルゴール、アクセサリー……。
アクセサリーの1つに秀馬の視線が止まった。
ーーーこれは……。
アンティークのメタル製ブローチで、メタル製で出来た馬蹄の上に白い小さなクローバーが組み合わさって出来ていた。
頭の奥深い場所、遠くに鍵をかけ封じ込めていた記憶がブローチを見たことにより鮮明に蘇ってくるようだった。
ライトの光でブローチが鈍い光を放つとほどに秀馬の中で眠っていた苦い想い出が走馬灯のように駆け抜けていく。
秀馬は、自分でも気がつかないうちに両方の拳を硬く握りしめていた。
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