いぬの置き物

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「おはようございます。秀馬さん」 出勤してきた秀馬に寄ってくる歩。 「秀馬さん、このタッパーなんですけど……」 昨日一子がイモ天を入れて持ってきたタッパーを歩が見せてくる。 「あ? それがどうした」 コートをハンガーにかけながら、秀馬が聞く。 「彼女、取りに来ますかねーコレ。それとも秀馬さんが返しに行きます?」 「なんで俺が。あっちが勝手に持って来たんだろ? それに……なんであのざんきりは、捨てられる容器にしないんだ。 わざわざ俺が、ざんきりに返しに行くだと?ふざけてんのか」 イラついてきた秀馬をなだめるように歩が言う。 「でも、ご馳走になった訳だし。秀馬さん、昨日言ってましたよねーーアンティークの店に行った話。近くでしょー彼女の店。今日帰り早く上がるんで俺が返しに行ってイイっすか?」 「いいけど、お前の言い方に引っかかる」椅子に座って秀馬は、首を傾げた。 「えっ、 なんすか?」 「まるで、お前が返しに行きたいみたいな言い方だと思ってな」 「あ、鋭い! さすがカリスマ美容師」 手をパチパチと叩く歩。 ーーーますます、わからない。何故、面倒なことを自らやりたがるんだ?
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