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「えっと、あのその髪型はぁ」
言いにくそうに女の顔色を窺いながら話かける歩。
ーーー何してんだ? まどろっこしい奴。
腕組みをして、足のつま先をタンタンと動かしながら歩の次の言葉を待った。
「あーなんて言うか……個性的で……素敵ですねーって……はははっはぁ」
女に髪型の謎を聞けない歩は、苦笑いして秀馬を見た。
ーーー何が個性的だ。褒めてる場合か!
「素敵ですか? 初めて言われました。ありがとうございます。これ、自分で切ったんですよ」
襟足辺りの毛先を摘み、満足そうな笑みを浮かべるざんぎり女。
ーーーなるほど。自分で切ったのか。いや、自分で切ったとしても、もう少しまともに切れなかったのか、切れないハサミでも使ったのだろうか。
無遠慮に女の髪型を観察してみる。見れば見る程にガチャガチャに切れている。
「秀馬さん、見過ぎ」
秀馬に注意しながら歩は、愛想笑いを女にしてみせた。
「で、もういいですよね? ああなった理由がわかったんですから」
女を気づかってなのか歩は、秀馬の背中を押して女から早く離れようとする。
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