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一番最初に並んでいたのは、昨日時計の下で見たアノざんぎり頭だった。
ーーー出た!ざんぎり!
妖怪か幽霊でも見たような驚きだ。
ざんぎり女の後ろに並ぶ客たちが、秀馬を見て黄色い歓声を上げる。
「真田秀馬よ!」
「きゃあー! かっこいい!」
「イケメン過ぎるぅ」
ざんぎりを見て固まる秀馬に変わり、後ろから来た歩が、客に声をかけた。
「おはようございます。お待たせ致しましたぁ。あれ? 昨日の」
歩は、ざんぎり女を躊躇する事なく指差した。
「おはようございます。あの、クーポン使わせてもらっても?」
歩が昨日渡したクーポンを差し出す女。
「もちろんですよ。ただ、予約の方が優先になりますので少しお待ちになりますが……よろしいでしょうか?」
「はい、今日は休みなので時間は、たくさんありますから」
女の声を聞きながら、秀馬は自分の不運を嘆いた。
ーーー朝から、運が悪過ぎだろ。
今日一日ロクな日にならないような気がしてきた秀馬。
アレルギー反応を起こしたように赤くなってきた腕を指でかきむしりたい気分になっていた。
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