いぬの置き物

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いぬの置き物

★いぬのおきもの 玄関は、いわば家の顔だ。 ーーーだから、大事な場所に場違いなものを置く訳には、いかない。 秀馬の家は、都内にある高層マンションの一室だ。内装や家具は、ナチュラルな感じをテーマに白と木目にこだわっている。 クリーム色のソファーに座り秀馬は、昨夜奇妙なアンティークの店で購入した小さな犬の置き物を指で摘み観察していた。 テーブルに犬の置き物を置き、しばし眺める。 ーーー色は白だから、統一感はあるが……何故、こいつは背中に黒い模様があるんだ? 犬の置き物には、背中に小さな黒い色が一点だけあった。 ーーーこの黒い模様さえなければ、玄関の飾り棚に置くことも可能だが……。 ため息をついて、腕組みをして犬の置き物を見つめた。 ーーーだめだ。こいつの置き場所がない。 秀馬は、犬の置き物を手にして部屋中を歩き回り結局、テーブルの上に置いた。 ーーーしばらく、仮にテーブルに置いて置き場所がなければ……店のどこかに置くか。 犬の置き物の件は一端保留にした秀馬は、次の案件であるテーブルに置いたファイルに目を通していた。 原宿に出来る新店舗オープンに向けて、そこの店長を誰にするかで未だに迷っていたのだ。 ーーー原宿の客層から言って、若くて明るい雰囲気のトップスタイリストといえば……。
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