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少し歩くと、落ち着いた洋館風の建物が目の前に現れて、そこでも少し足を止めた。
あっ……。
店の前に社長の姿が見え、私は急いで走り出した。
私を確認すると社長は少しほっとしたような表情をした後、「走るな」そう言葉にした。
「すみません……お待たせして」
てっきり待つにしても店内にいると思っていたので、私は慌ててその人に謝罪した。
「先に出たはずなのに来てないから……」
小さく息を吐いた社長に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「すみません。歩いていたら少し迷ってしまって」
まさか、建物をみて躊躇したとも言えず、私はもっともらしい言い訳をした。
「だからタクシーを使えっていっただろ?」
「すみません」
もう一度謝った私の顔を覗き込んだ社長に、私の胸はドキンと高鳴った。
「謝らなくていい。俺が一緒に来なかったのが悪いな。悪かった」
俺……。
私が俺になった事も、仕事違う砕けた話し方に、更に昔の先輩を思い出す。
ジッと見つめてしまった私の視線に気づいた社長は、少し困ったような表情を見せた。
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