思い出はきれいなままで

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「もう、遅くても、今度は間違えたくない。自己満足だけどあの時の過去を清算するためにも、きちんと言わせて」 そこで先輩は話すのをやめると、私の前まで来て、カーペットの上にひざまずくと、私と目線を合わせて真っすぐに私を見た。 「6年前も、そして今も俺は千香が好きだ」 ずっと聞きたかった言葉が現実のものになったのに、私は何も言えずまた涙が溢れた。 「ごめん、今更だな。でもようやくこれで前に進める」 そう言って、柔らかく微笑んで立ち上がろうとした先輩に、私は思い切り抱きついた。 「ま……って!」 急に抱きついた私に驚いたように私を見た。 「遅くないから。全然遅くないの」 「遅くない?」 繰り返した先輩に、私は大きく息を吸い込むと真っすぐに先輩を見つめた。 「私もずっと、あの時から今も先輩が好きです」 ようやく言えた……。 呪縛が解けるような感覚に、私は息を吐きだした。 「やった!」 その言葉と同時に、強く先輩に抱きしめられる。
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