29(承前)

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 兄・継雄がタツオを途中でさえぎった。 「これは進駐軍と作戦部の総意だと考えてもらいたい。わかってほしいのだが、貴君が指揮する菱川班と天童少尉の第2班では、勝利の確率に差があるのだ。わたしたちもそれが一桁台前半の僅差であれば、迷うことなく第2班をつかう。だが、二桁それも20パーセントに近い大差では、たとえ敵スパイの存在があるとしても、菱川班を使うしか選択肢はない。こちらにとっても苦渋の決断だ」  重苦しい沈黙がおおきな会議室を満たした。最初からここの空気がおかしかったのは、そのせいだったのか。兄の顔にも苦悩の色が見える。 「ですが、少佐、もし作戦決行中に敵のSがサボタージュや破壊工作という暴挙にでたら、どうするおつもりですか。それこそ作戦の成否を揺るがしかねません」
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