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森永中将が口を開いた。あごひげの先をひねっている。集中しているときの癖だろうか。
「そのために逆島少尉、きみがいる。敵のスパイの件は、きみ以外には明かさない。きみは自分のチームのなかにいるスパイの存在につねに気を配りながら、本土防衛決戦では『須佐乃男』作戦指揮官として孤軍奮闘してもらいたい。ここにいる全員が、きみに期待している」
そこまでいわれたら、黙って引きさがるより方法はなかった。逆島少佐がいった。
「貴君に伝える要件はそれだけだ。さがって、休みなさい。明日も朝早くから、訓練がある。わたしたちはまだまだ軍議の続きがある」
「はい」
タツオは敬礼して、イ会議室を退出しようとした。背中に声がかかる。森永中将だ。
「ちょっと待ちなさい」
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