29(承前)

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 振りむくとひげの中将がこちらを穏やかな目で見つめていた。 「わたしは生前、お父君と親しくしていた。逆島派ではなく、天童派だったのだがな。今回の本土防衛決戦に勝利を収めた暁には、必ず逆島家復興のために、ひと肌でもふた肌でも脱がせてもらう所存だ」  そういうと森永中将は、ゆっきりと楕円テーブルにそろった進駐軍将官を見わたした。 「それはここにいる老いぼれども全員の総意ととってもらってかまわない。年若いきみに日乃元の運命を背負わせ、戦うだけでなく、内部にいるスパイにまで注意せよというのは、いささか酷すぎるとは思う。だがな、今は逆島断雄、きみが最強の札だ。存分に力をふるってもらいたい」
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