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逆島少佐から厳しい声が飛んだ。
「菱川班、静かに」
朝礼の空気が引き締まる。タツオは口を閉ざして、窓のむこうに目をやった。純白の冠をいただいた不二山が、秋晴れの空のした優雅に裾野を広げている。人間たちの愚かな戦いになどまったく関心がないようだ。逆島少佐がいった。
「今後、二週間、候補生に休日はない。現在のところ、本土防衛決戦の予定日は11月11日だ」
まだ十代の新任少尉たちがざわつきだした。タツオもあらためて作戦決行までの時間の短さを痛感した。これは日乃元の国の命運をかけた決戦なのだ。期末試験の準備とはわけが違う。
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