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死を思え
…はて。
私は、疑問に思った。
ここは、どこなのか。
一種の記憶喪失か? などと考え、ちょっとばかり胸が踊る。
待て。そうではなく。
深呼吸をして、訳もなくワクワクしていた自分を戒める。
そもそもだ。ここはどこなんだ。こんな場所は知らない。
こんな、薄暗く薄気味悪い所なんか。ゴツゴツした道(アスファルトで舗装されてないなんて!)、気味の悪さを助長する生ぬるい風。
風に揺られる柳の木。
あぁ、分かった。夢か。
そう言えば、最近ホラー映画を見たんだった。それか。
…こんなシーンは無かったけど。
夢ならどこでもいいか。この地獄の入り口みたいな風景も、ホラー映画の体験版と思えばそれなりに楽しめる。
私は、そう悠長に考えていた。夢だと分かっているのなら、アトラクションとして楽しめば良いのだと。
「楽しそうだな。」
呆れたように、誰かが言った。
私は声のした方へと、視線をむける。
そこには。
「お前は自分の置かれた状況が分かっていないようだ。」
死装束? と聞きたくなるほど真っ白な着物に身を包んだ容姿端麗な男。ちょっと人を蔑むように見るのを止めたらいい男と言ってあげてもいい。
私は他人に蔑まれて喜びを感じる手合いではない。
「私の状況?」
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