光芒

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 それは小学二年生の土曜日のことだ。そう……僕がまだ、知多に住んでいた時。今にも泣きそうな空がやけに印象に残っている。  僕は学校帰りに公園に立ち寄った(もちろん、独りだった)。あの頃は、僕の両親が喧嘩をして家庭内が険悪なムードに満ちていて、なんだか真っ直ぐ帰る気が起きなかった。だから街をうろついていたのだが、そうした結果、公園に着いたというわけだった。  僕は公園のブランコに座ってゆらゆら揺れる。これからどうするかなんて、なんにも考えていなかった。ただ風がちょっとばかし冷たくて……そのせいかは知らないが、僕は変に寂しいような、どこにいても居心地の悪いような気分でいた。  そんな時、たまたま目に飛び込んできたのが、その姿……砂場で遊ぶ、あの子の姿だった。  肩くらいまで伸ばした髪の毛、色白な肌、それとなんだか可愛らしいキャラクターがプリントされた水色のTシャツ……見たところ、僕と同い年くらい。どこにでもいるような女の子に見えたけど、ただ気になったのは、その子がそこで独りで、しかも楽しそうに遊んでいるということだ。砂で山を作ったかと思えば、崩したり、絵を描き始めたりとかしていた。その子は僕の視線に気づいても、構わずずっと遊んでいた。  ……今思えば、あの子も何かから逃げていただけかもしれない。でも、なんだかその様子は、寂しそうだけど、堂々としていて、とにかく自由な感じがしたんだよな。色んなしがらみから関係ないところで、飄々としているようなあの子の姿が、僕には輝いて見えたんだよな。  それから、いつだって、学校帰りにあの公園で待っていると、あの子は来た。僕以外の人がいる時だってあったけど、あの子は気にしなかった。  今では不思議なことだが、僕はあの子に惹かれていた。ストーカーのようで気が引けたけども、そのうち、あの子の方も、僕のことを覚えてくれて、いつしか二人で遊ぶようにもなった。お互い独りぼっちの僕らが出会って、遊んだのだ。  おかげで僕は苦手な鉄棒を克服した。あの子といると、自分の中の何かが変わっていく気がした。  そして僕はその遊びのなかで、ようやくあの子が男の子だってことに気づいたのである。
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