スモールワールド

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 病院の一室。部屋の入口には、“細胞科”という表札が掲げてある。 「それにしてもすごい時代になりましね。自分の体の細胞の一部を取り出して、シャーレの中で遊ばせるなんて。」 「一旦体から切り離すことで、細胞は活性化されます。シャーレの中には、活性化を促すような物もたくさん配置してあります。お寺、競技場、ピラミッド、」 「あははははは。細胞達にはそんな物、関係ないでしょう。」 「いいえ。最先端の研究によれば、切り離された細胞は自我を持つことが証明されています。そのような自我を持った細胞一つ一つがシャーレの中で生き生きと生活するからこそ、活性化されるのです。シャーレの中を顕微鏡で覗くと、彼らの生活が分かります。一緒に見てみましょう。」 「ほら、見てください。右手の小指の細胞と、左手の小指の細胞がじゃれあっています。同じ小指だから気が合うのでしょうね。お、その近くのピラミッドには、脳細胞がいますよ。彼らが体に戻ってくるのが楽しみですね。小指の細胞はあと一時間したら体に戻しましょう。」 「そんなに少しの時間でいいんですね。」
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