私が死んだのは

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   あら、まあ。  ええ、お久しぶりですわね。  うふふ、幽霊に顔色の良い悪いがあるのかしら?  ・・・・・・ええ、実はあの人の具合が思わしくなくて。  ただの風邪だと言うけれど・・・・・・。  ごめんなさいね、まだ、そちらへは行けないみたい。  行こうとしても、ほら、足が動かなくて。  そういうもの、なのね。  本当にごめんなさいね。もう少し、もう少しだけ待っていていただけるかしら?  あの人ったら、子供みたいに手がかかるから・・・・・・心配で。  私が用意しておかないと、靴下さえどこにあるかわからない人で、いくら言っても病院嫌いがなおらなくて・・・・・・ほうっておけない人なんです。  そのくせ、私が寝込むと看病するって張り切って、逆にハラハラさせられて。  ・・・・・・どうして私が先に死んでしまったのかしら。  あら、ごめんなさい。しめっぽくなってしまったわね。  ふふ、そんなに困った顔をなさらないで。  きっと、私が先に死んだのにも理由があるのでしょうから。
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