二段目:【被験者】―ヒケンシャ―

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「それにしても。普通、ここまでするものかな?自分の孫を虐めて愉しんでない??」 「薙…」 憤慨するボクに、遥は突然、大きな瞳を潤ませて抱き付いてきた。 「解ってくれる!?あの爺、か弱い俺を虐めて、遊んでいるんだよ~!」 …あぁ、はいはい。 可哀想、可哀想。  思いの外、凹んでいる様子だったので、ボクは遥の頭を『よしよし』と撫でて慰めてやった。 撫でられて満足そうにしている彼を見ていると、とても先程の術者と同一人物とは思えない。 何やら、大きめの猫の様だ。  それにしても腑に落ちないのは、鍵爺の狙いだ。確か、ボクを監視している筈では無かったか?  それが今では、遥を翻弄する事だけに、重きを措いている様に見える。 何がしたいのか、さっぱり解らない。 「よく気が付いたね、流石(金の神子)!」  ──そう言うと。 遥は、不意に真顔になって、ボクに向き直った。 「鍵爺は、試しているんだよ。」 「誰を?遥を??」 「うん。爺ちゃんは、鍵島流の奥義の全てを、俺に相承させるつもりなんだ。だからこうして毎日、手を変え品を変え《式》を仕込んじゃ、俺の腕を試している。《式神遣い》の資格試験のつもりなんだよ。」 「これが試験!?鍵爺がそう言ったの?」 「まさか。そんなに親切じゃないよ。」  遥は、少し不貞腐れた顔をして言った。 「あの人は魔物だからね。おいそれと本心を明かしたりしない。だけど、いつも魂胆は見え見え。そうして、周りが勝手に動いてくれるのを待つんだ。えげつないんだよ、うちの祖父ちゃんは。」  ──それが本当なら。 鍵爺は、そうとう難儀な年寄りだ。何やら、前途多難の予感がする。
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