三段目:【覚醒者】―カクセイシャ―

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 そもそも。一座が所属する『特別捜査室』は、内閣府の外局として措かれており、その存在は公にされていない。 三権に跨がる特別捜査権を与えられた、極めて特異な部署だからだ。 いざとなれば、内閣総理大臣…又は、天皇の勅命として、あらゆる政府機関に対し、捜査権を行使する事が出来る。  こんな特権が一般に知れたら、忽ち非難を浴びるだろう。憲法に唱われる、『三権分立の原則』すら越えた存在なのだから──。  六星一座は、あくまでも影の存在でなくてはならない。だからこそ、公務員でありながら『副業』に就く事も認められている。  寧ろ、それを奨励する傾向があるのだ。 それもこれも、表の『稼業』を隠れ蓑にして、行者という裏の『家業』を悟られない様にする為である。  日本国の『柱』である天皇を裏から支える為、六星一座は、長い間、国ぐるみで匿われて来たのだ。 平安時代から続く家柄は伊達じゃない。 実に良く出来たシステムだと思う。  こうした理由から、今では、六星行者の九割が副業に就いている訳で…。昔の様に、年がら年中屋敷に詰めている必要は無い。 《西の対屋》に滞在するのは、裏の仕事が長引きそうな時だけだ。  そして──今。遥は、オブザーバーとして嫡子審議会に参加する為、自宅を離れて総本家に詰めている。  対して。一慶、祐介、苺の三人は、幼い頃からこの屋敷の住人であるらしい。 これも、何やら訳有りと見ているのだが…今のところ、ボクに、それを語ってくれる者は無かった。
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