四段目:【救済者】―グザイシャ―

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 そう言って、弾ける様に一慶は大笑した。 悔しい。こんな低レベルの冗談に引っ掛かるとは! 腹いせに、思い切り向こう脛を蹴飛ばしてやると… 「い──!」  彼は、悲鳴を喉元に飲み込み踞った。 丸めたその背に「ざまぁみろ」と罵声を浴びせて笑ってやる。 一慶は、目尻に涙を浮かべて、憎らしげに怨み言を云った。 「この、じゃじゃ馬!お前は冗談が通じねぇのか!? 笑うトコだろうが、ここは!」 「笑えないよ、そういう冗談は!」 「馬鹿だな…笑っとけよ。」 「え?」 「笑えない時ほど無理にでも笑え。緊張が解れる。心のストレッチだ。」     心のストレッチか…成程。 言われてみれば、そうかも知れない。 気が付けば緊張が解れている。 「心がガチガチになっていると、大概ろくな事にならないからな。ま、気楽に行こうぜ。」  そう言って、一慶はバン!とボクの背中を叩いた。 「痛っ!」 「お返し。これで貸し借り無しな?」  意地悪く笑って、サラリと()わす。 いつだって一慶は、こんな風だ。ボクが落ち込みそうになると、タイミング良く茶化して来る。 気配りなのか…それとも単に巫山戯(ふざけ)ているだけなのか、直ぐには判別が付かない。
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