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とりあえず、妊婦さんをこれ以上立たせておくわけにもいかない
3ヶ月なら悪阻だってまだまだキツイだろう
「え・・・っと。お名前、なんでしたっけ?」
そういえば、婚約者とは聞いたが名前は聞いていない
「す、すみません・・っ。宮本 しずかです。」
涙声で答える彼女は
きっと、ここに来るまでずっと気を張り詰めていたのだろう
ヘナヘナとその場にしゃがみ込んでしまった
「宮本さん、とりあえず座ってください」
掘りごたつの席に彼女を迎え入れ
私と向き合う妙な感じだが、仕方ない。
お水を一口飲み、少し落ち着きを取り戻した彼女は
ゆっくりと口を開いた
「あ、あの。取り乱してしまって、すみませんでした・・・・・」
「・・・・・いえ。私も宮本さんの立場だったら、平常心ではいられないかもしれないです。」
・・・・・・・・。
自分だけではない。お腹の赤ちゃんの事も考えると、気が気じゃないはずだ
「赤ちゃんの事、東堂君は知ってるんですか?」
それにしても、健人は何を考えているのだろう。
彼女が妊娠しているのに、婚約破棄なんて そんな無責任なことをする奴では無かったはずだ
今日の話、って・・・・・
一体・・・・・・。
「いえ・・・。疑わしくはあったのですが、ハッキリ検査していなくて・・・・。1人で、もしかしたらって思っている時に 結婚をやめるって・・・・・・」
・・・・・・・・なるほど。
だから、か。
「ちゃんと、お話してください。彼と私は友人の期間が長いですが 彼は責任感が強いです。
それに・・・・、私にあなたと結婚する事を報告してくれたとき あなたの気持ちに応えたいって言ってました。
とても、あなたの事を大事にしていると 私は感じました。」
長年の友情よりも
あなたを、健人は選んだ
あの日、情けなく縋る私を振りほどいて
彼はあなたの元へ行ったんだ
その自信を持って欲しい
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