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一応、訊いてみる。すると、清水原は「よかろうや」とあっさり見捨てた。マブダチだったのでは? そんな呆れがため息となって出てしまう。
「清水原くーん」
依頼人である吉塚さんがようやく現れた。喜寿とは言え、まだまだ元気な浅黒いおじいさんは困ったように白い眉を曲げている。
「いやあ、すまんね。朝っぱらから早うに」
「そうですよ。まだ朝の6時やけんね、普通に寝てたわ」
「ごめんて。そげん怒らんでよ。うどん食わしちゃるけん」
吉塚さんは川端商店街にある古着屋だが、何故か趣味でうどんを打っている人だ。何度か食べたことあるけど、これがなかなか美味。
「朝飯にうどんか……悪くないな」
すぐさま清水原の機嫌が治った。
「それで、ウカちゃんの代行が依頼よね。なんでまた?」
訊くと吉塚さんは「うーん」と唸った。
「いやな、ウカちゃんの気配が消えたって、うちの家内が言うから覗いてみたんよ。そしたら本当におらんし。いつもなら、夜中の12時には帰っとるんやけどねぇ……」
「まあ、稀なこともあるけどね。ウカちゃんがあの博多川に顔突っ込んで、何度、道真様の世話になったことか」
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