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喧騒、悲鳴、血の臭い。
目の前には目を閉じていても分かるいつもと同じ光景が広がっているのだろう。
いつもと違うのはターゲットに死が訪れなかったこと。
突っ込んでくる車に身動きできずにいた彼女を突き飛ばし、代わりに撥ね飛ばされた俺は今、ビルと車の間に挟まっている。
しかし不思議と痛みはない。
ゆっくりと目を開くと視線の先に赤い傘が見えた。その側で俺に突き飛ばされた彼女が突然の出来事に座りこんだまま震えていた。
「生きろ」
濡れた髪から伝った雨が涙の様に頬を濡らした俺はそう呟き消滅した。
《終》
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