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「それゲームだよね。何のゲームなの?」
寄せられた肩が触れて、ふわっと良い匂いがする。
笑顔で僕の手元を覗き込む早瀬さんの横顔が振り向いて、ばっちりと両目が合う。
僕は口を半開きにしたまま、どう反応すればよいのか分からず固まってしまっていた。
「あ、危ない!」
「え」
早瀬さんの慌てた声に、僕もつられて視線をスマホに戻す。
僕がプレイしていたのは、よくあるタワーディフェンスゲームだった。ゲーム画面では、ちょうど僕の城が敵に攻め落とされているところで、あえなくゲームオーバーになる。
「あぁ……邪魔しちゃってごめん」
「いや、別に……たいしたことじゃないから」
整った眉を寄せて表情を曇らせる早瀬さんに言ってから、僕はスマホの画面を消してズボンのポケットにねじ込んだ。
「ほんとにごめんね。えっと、それでさ」
「――おい、早瀬! 何してんだ、さっさと行くぞ~!」
「あ! うん。ちょっと待って! ごめん小林くん、また後でお話しようね。じゃ!」
廊下から男子の声がして、早瀬さんは僕に両手を合わせると踵を返して駆けていった。
いったい何が目的だったのか。僕は呆然と早瀬さんの背を見送る。
そんな僕を笑うような、クラスメイトの視線が痛かった。
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