人形の家

2/2
前へ
/2ページ
次へ
私の眼差しの先に、少し猫背気味な彼の背中がある。 その器用な手先で何を作っているのだろうか。 ぼんやりと眺めていると、作業に没頭していた彼が私の視線に気づいたのか、ふと手を止めて振り返った。 穏やかな微笑みを浮かべて私の傍らに立ち、そっと手を伸ばす。 彼の優しい手が柔らかく私の髪を撫でる、そして──私のものではない頬を! 彼は愛おしそうに私のものではない身体を抱いて作業台に戻った。 私のものではない身体は作業台の上にしばらく横たえられた後、彼の手によって作られた小さな赤いワンピースを着せられた。 彼は満足そうに頷いて、静かに私のものではない身体を元あった棚に戻した。 私の眼差しの先で、彼は少し伸びをして、また別の作業へと没頭していった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加