3521人が本棚に入れています
本棚に追加
. もうね、今さらどこから突っ込むなんて言わないよ。俺だってラノベとかアニメをよく見るしさ。今どんな状態なのかくらいは理解してるつもりだよ。
でも、目を閉じて次目を開けたら森ってどういう事よ。
そりゃあ、ごみのポイ捨てもしたことあるし、蟻とかの虫だって無意識に殺してるかもしれないよ?だからって何の予備動作もなしにこれは酷いんじゃないの?
右見ても森、左見ても森。
一言で言うなら「遭難」だった。
直前まで俺は何してたっけ? 思い出せないけど多分部屋でゲームしてたはず。
あまりにも負け込んでたから、深呼吸しようと瞼を閉じて改めて画面を見ようとしたらこれだよ。
なんか可愛い女の子をかばって交通事故とかでもなく、空中に不思議な穴が空いて、そこを通ったら異世界とかでもなく。
ただ、「あ~つかれた」みたいに目を閉じて背伸びしたらここに居た。
「……マジで?」
これがやっと発した俺の第一声だった。
そもそもどうしてここが、異世界だと分かったかと言うと、周囲の草を見て分かった。
なんかメリオという有名なゲームに出てくるバクバクフラワーみたいに鋭い牙をのぞかせた変な花がそこに居た。
その動きは俺の知るハエトリ草みたいにゆっくりとした緩慢な動きじゃなく、近くを横切った兎(と思われる生き物)を一瞬でばくり、と飲み込んだ。
「あ、こりゃ異世界ですわ。もし違ったら新種発見で俺有名人ですわ」
とにかくいきなりあんな危ない生き物に近づくほどゲーム脳していないので、その場を離れる。
改めて自分の恰好を見るとこれまた違和感バリバリの普段着。
樹海のようにも見える森の中を半袖(ウニクロ製品)でふらつく一般人男性がそこに居た。
とにかく森を出たい一心で歩いているとガサリと草むらが揺れた。
まさかいきなりエンカウント? なんて考えているとそこから出てきたのは先ほどバクバクフラワーに食われた奴と同種の兎だった。
可愛らしい見た目でこちらを見ているが、その中で可愛らしくない凶悪な角がこちらに向いている。
しかも突き刺そうとするような前傾姿勢。
「ま、まて。おちつけって。俺はただの一般……」
言い切る前にその兎がこちらへ飛び込んできた。
最初のコメントを投稿しよう!