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街の中に入ると、めずらしいのか珍しいハクとコクオーに周囲の視線が集まる。
あまり目立ちすぎても良くないと意見がまとまって、馬車を止める。
馬車自体は、門の入り口付近に停留所がありそこへ預ける事になった。
ハクとコクオーは前鬼と後鬼が引いて進み、王子は検問の兵が用意した馬に乗って道を進む。
王族と騎士、冒険者四名と角の生えた美少女二人。
なんとも形容しがたい取り合わせが大通りを進むと、城の門前で大人数の兵士がこちらに向かってきた。
何事かと身構えるが、兵士たちはこちらを見つけると整列し膝をついた。
「ご無事の帰還心よりお喜び申し上げます! 殿下!」
そう叫んだのはブラウンの長髪を後ろで縛った女騎士だった。
鎧を着こんでいるが、それでも女性らしい体つきがその端々から窺える。
僅かに日に焼けたその女性はレコンキスタをチラリと見る。
その瞳には僅かな笑みを浮かべている。
それに対して彼も頷いて答える。
女騎士がこちらに視線を向けるとジョエルに近づいて話しかける。
「道中の護衛ご苦労だった、ここから我々が引き継ぐ。報酬などは追って兵士に連絡させよう」
「ええ、では紅のオーク亭に我々は宿を取る予定ですので、何かあればそこまでお願いします」
「心得た」
なにその『飛べないオークはただオークだ』って言いそうな宿屋。
超ダンディなオークとかいそう。
「では王子、我々はこれにて」
ジョエルがそう言うとリュシエールはこちらに視線を向ける。
一瞬寂しそうな顔をするが、すぐに取り直して初めて会った時と同じ威厳ある表情で頷くと、騎士達を伴って城へと歩いていった。
それを見送り、ジョエルとアルベールに向き直る。
「これからどうすんだ? 俺はとりあえず宿に行くつもりだが」
「別にすぐ来るってわけじゃないだろ? ちょっと観光でもしてくるよ。ギルドにも用があるし」
「なるほど、なら僕が同行しよう。 アルベール頼めるか?」
「ああ、俺たちの部屋とそちらさんの部屋を取っておくぜ。 相部屋でいいんだよな?」
「おおきに」
別部屋で、と言う前に前鬼が答えてしまった。
彼もそうそうに宿屋に向かってしまい、小さく溜息を吐くしかなかった。
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