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「カナはどうする?」
「私は適当に街をぶらついて矢を補充しておく」
「そっか、じゃあまた宿で」
「うん」
そう言ってカナはすたすたと、人込みの中に紛れてしまった。
それを見送ったジョエルが声をかけてくる。
「じゃあこっちだよ。総合ギルドの登録は順番待ちになるんだが、僕の紹介と言えばある程度は優遇してくれるはずさ」
「いいのかそんなことして」
「構わないさ、向こうも才能ある冒険者を紹介されるというメリットがあるからね」
聞けば、総合ギルドは登録するにあたって順番待ちが発生しているらしい。
普通に申し込めば、数カ月は先の事になるそうだ。なぜそこまで集中しているのかと理由を聞くと、ジョエルは一枚のカードを見せた。
光沢のある銀色のカードには現在何も書かれていない。
「それは?」
「これはスキルカードといって、総合ギルドだけで発行される特殊なギルドカードなんだ」
「へえ」
「ギルドへの登録を証明するという点においては、他のギルドのカードと何ら変わらないが、このカードには特殊な効果が付与されていてね。本人が持っている能力を視認できるというメリットがあるんだ」
ジョエルはカードを指先で軽く操作すると、表面をこちらに向けた。
『ジョエル=アルバート 人族 剣術Lv10 体術Lv7 魔剣技Lv1 投擲術Lv6』
「あれ、さっきは何もなかったのに」
「このカードの機能の一つさ、見せたくない部分を隠せるんだよ。冒険者にとってスキルは、飯の種であり最も秘匿する力だ。そうそう見せないように普段は見せても構わない部分だけを表示させるのさ」
つまり、今ここにかかれてる能力もジョエルのスキルの一部って事かな。
「でもそれって、詐欺とかあるんじゃ?」
「まあ、素人じゃ騙されるだろうね。でもギルドの登録する時担当官が決まるんだけど、その人には全てを開示する義務があるんだ。だからその人が能力を意図的に隠して周りに被害を出していないかを監視するんだよ」
一応対策はされてるんだ。
担当官を決めたりするって事はすり合わせで時間もかかる……そりゃあ順番待ちになるわけだ。
自分がどれだけ成長したか目に見える指針にもなる、そんな便利なカードは皆手に入れたいもんな。
うーん、そう思ったら俺も欲しくなってきたな。
「どうやら君も気になり始めたようだね。早速行くとしようか」
ジョエルはそう言って小さく笑い、道案内を始めた。
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