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「ああ、お姉さん。金貨七百は持ち歩き難いから白金貨に変換してくれる? 百枚だけ金貨で受け取るよ」  頷くと受付嬢は、頷いてカウンターの奥に引っ込んでしまった。 「おい、何無視してんだよ」  ぐいっと肩を掴まれ引っ張られるが、好き勝手に体を揺さぶられるのは良い気分がしない、体に力を入れて抵抗する。  するとびくりともしない事に驚いたピアスは、一瞬顔色を変えるがすぐに強気に出てきた。 「おう、先輩のいう事は聞くもんだぜ? てめぇ、見た所EかFの駆け出し冒険者だろ? どんな旨い仕事をしたか知らねぇが、このCランク冒険者ユーコット様に逆らうたぁ良い度胸だ」  報酬が変換されるのを待つ間、ユーコットと名乗った男に向き直る。 「そうだ、最初から素直に――」 「あのさ、総合ギルドってこういう奴ともめ事起きるとどっちが悪いってなるの?」  やっと向き直ったと思ったら、話を無視して質問したことにユーコットは顔を真っ赤にする。 「ぶっ殺す!」  腰に下げていた短剣を引き抜く。  周囲の仲間も呼応して武器を引き抜く。  右手の短剣を横薙ぎに振るう動きは、素人と比べて鋭くCランクと言うだけあると言った感想だ。  だが、その動きは驚くほど緩慢に見えた。  これまでの自分なら恐らく、目で追うのは難しく、咄嗟に壁を張るくらいだっただろう。  だが、これだけ見えていれば対応手段も十分増える。  一歩前に出て腕の内側に入りこむ、ユーコットはまだそれに気付いていないようで『してやった』といった顔のままだ。  まるで周りの動きが遅くなったようにすら感じる。  そのまま右手を突き出し、ユーコットの腹に打ち込む。  拳に相手の鎧がゆっくりとひび割れていく感触を感じる。  次の瞬間ユーコットは仲間を巻き込んでそのまま後方へ吹き飛んでいった。  激しい破砕音を立てて倒れこむ男達は、自らが脅しの為に抜いた武器が腕や手足に刺さって悲鳴を上げていた。 「次からは相手をよく見てから脅すんだな」  言ってみたかった『カッコいい捨て台詞シリーズ』を吐いてカウンターに向き直る。    それにしても、視力が良くなったとおもってたけど、動体視力と身体能力まで上がったのか。  自分の手の平を確認しつつ受付嬢を待つ。  
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